この文章を書いているのは6月末ですが、私の懇意な格闘家がカザフスタンに試合のため遠征しています。
いまは勝利の報を聞いて、安堵しているところです。
彼との出会いは2020年、当時はプロの総合格闘家でした。
総合格闘技とは、打撃と組技で競技するスポーツです。
彼の父は日本での総合格闘技の黎明期に活躍した選手であり、本人も2021年からRIZINという国内最大イベントに出るに至りました。
レスリングの名門高校を出ている彼は組技が得意で、必殺技は首極め(チョーク)です。
組技は膠着するパターンが多く、一本極めることは簡単ではありません。
彼はレスリング仕込みのタックルで相手をひっくり返し、するすると絡んで頸動脈を締め上げます。
その流れは肉食獣の狩りを思わせるほど、見事なものです。
2023年に30代半ばで総合格闘技は引退したものの、以後は組技の試合に出まくってベルトやメダルを獲りまくっています。
こんなに試合数をこなし、かつ勝つ人を私は見たことがありません。
これだけ勝てたらさぞや気持ちがいいだろうと思いますが、当然これは長きにわたる不断の厳しい練習があってこそです。
最近新天地を求めて海外で試合することも多くなり、今回はカザフスタンに行く運びとなりました。
カザフスタンやダゲスタンなど、旧ソ連の構成国は組技が強い印象があるのですが、あえて未知の強国に単身挑むのはまさに男の浪漫です。
しかし輝かしい面ばかりでなく、身体は深刻に傷んでおり、試合数を減らすべきと私は進言しています。
彼の体重は60キロ代にもかかわらず、無差別級の試合では90キロの選手に極め勝ちました。
体格ではなく技術でこんなことができるのかと…技術は努力の結果、努力は気概あればこそです。
彼は自分で次はどこで戦うべきか考え、その舞台を踏んで勝ったあとには必ずデカいことを言ってきました。
たとえばその団体のチャンピオンになるだとか、団体を盛り上げ牽引するといった発言です。
そしてそれを実現させてきました。
「言葉にすれば現実がついてくる」と彼は言いました。
覚悟あってのことですが、まさに至言と切に思います。